猫の木彫りを27体作ったところで、モデル猫を募集した。
Instagramで送料材料費込1000円という値段で募集したら6匹分の応募があった。想定していたよりも少なくて、そんなものなのね、と木彫りに対する需要の少なさを感じたものの、一体目を作ってみて応募数が少なかったことに安堵した。
なぜかというとモデルのいる猫を彫るスピードが、いつも彫るスピードより段違いに遅かったから。自分で彫っていた木彫り猫は、自分の好きなような姿形で、バランスが崩れたら崩れすぎないように自由に調整できたのだけど、注文された猫は世界で一匹だけの猫で、そのコに限りなく似せていかねばならない。自由に姿形を変えるわけにはいかない。
思いついたようにザクザク進めていては、そのコに近寄ることさえままならない。
写真を見つつ、おそるおそる形をあらわにしていく。何度も何度も繰り返し見て彫ってを繰り返すと、一日があっという間にすぎていく
一体彫るのに一日もいらんな、とおもっていたのに、一日じゃ足りなかった。彫るスピードが遅くなると同時に、今まで作り上げてきた彫刻を見て、あんなにサクサク彫れてたのが奇跡のような気までしてくる。
それぐらい特定の猫に似せる彫刻は彫るスピードが遅かった。このまま彫り続けても完成しないんじゃないかという悪夢のようなモヤが身体にまとわりついてくる感覚。その不安を横において少しずつ、ほんとに薄皮を一枚一枚はぐように彫っていく。時間はかかって、一体をなんとか完成までこぎつけられたとき、コツコツやればなんとかなるもんだなあ、と実感した。同時に安心もした。ちゃんと彫れる。今まで作ってきたことは無駄になってない。昔の自分は無駄ではない。
だいたい、四角い木片から猫を彫り出す作業は、いつもなんで出来てるのか謎だ。絵も彫刻も勉強したことがないのに、なんでできるのかなーって謎に思いながら彫っている。前回は可愛く彫れたと思っても、今回同じように可愛く彫れる自信はいつもない。
でも何回も猫を見て、少しずつ彫りすすめていくと、前回とはちょっと違うカワイイ猫ちゃんが出てくる。そしてまた、こんなカワイイコが彫れるなんて!と驚く。
そういうときはいつも猫が導いてくれてる気がする。うに丸が先頭に立って、モデル猫ちゃんが、うまい具合に誘導してくれているような気さえする。だから、猫が私に彫る場所を教えてくれている間は彫刻を続けようって思う。
悩んだときはいつも猫が教えてくれる。


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